あなたは
「天然由来成分配合!」と書かれたシャンプーと、書かれていないシャンプーだったら、どちらを選びますか?
もし「”天然由来成分配合”と書かれた方を選ぶ」と答えたり、
「えー、天然のほうがそりゃいいんじゃないの?」と考えたりした方にはぜひこの記事を読んでいただきたいです。
最近、
『天然由来成分配合!』とか、
『天然由来成分100%』など、”天然由来成分”と書かれたシャンプーや化粧品をよく見かけるようになってきました。
CMやその他の広告などでも、自然派とかナチュラルなどと似た言葉でもよく宣伝されているように思います。
この”天然由来成分”という言葉ですが、私は『非常に誤解を招きやすい宣伝文句』だと思っています。
もっと強い言葉で言うと『あなたは”天然由来”というメーカーの宣伝文句に騙されていませんか?』と聞きたいのです。
今回は”天然由来成分”への2つの大きな勘違いとその真実についてお話しようと思います。
1.”天然由来成分”の真実その1『”天然由来成分”は天然の成分ではない』
これ、実際お客様とお話させて頂く中でも、ほぼすべての方が勘違いしています。
“天然由来成分”と”天然成分”は実は全くの別物なんです。
1-1.”天然由来成分”と”天然成分”では全く意味が異なる
“天然由来成分”という言葉の他に、”天然成分”という言葉を耳にしたことはありませんか?
『由来』という文字があるかないかの違いだけですが、その意味は全く異なります。
ではそもそも”天然成分”とは何なのでしょう。
天然成分とは
主に植物や鉱物から得られる成分のこと。化粧品に使うことが有用、かつ安全であれば天然成分をそのまま化粧品に配合することができる。
– コスメコンシェル – より–
つまり天然成分とは、天然から取り出したそのままの成分で、”化学的な処理を行っていない”成分のことを言います。
自然界にもともと存在するもので、花・木・ハーブ・粘土・動物・鉱石類から抽出されます。
例えば、植物を水やアルコールなどで抽出したものや、もっと言うとハチミツ・果汁なども天然成分と言えます。
成分表でラベンダーエキス等、〇〇エキスとかいったものを見たことがあるかと思いますが、ああいったものが”天然成分”と思っていただいてOKです。
あなたが思う”天然”のイメージはこの”〇〇エキス”に近いのではないでしょうか。
これに対するのが”合成成分”。
では”合成成分”とは一体なんなのか、こちらも見ていきましょう。
1-2.”合成成分”のイメージは”石油化学”
“天然成分”に対するのが”合成成分”。
合成成分とは
化学的な方法で合成した成分のこと。
– コスメコンシェル – より-
天然成分の良い点を生かし、不純物の混じりや安定性、安定的供給性など弱点をなくした成分。
つまり合成成分とは、それ自体はもともと自然界にはなく、
『天然成分をもとに“化学的な方法で”合成し、天然成分を真似た(同じような作用をするような)新たな成分』
のことを指します。
実際に植物などから天然成分を抽出しそれをもとに化学合成することもありますが、それだとコストがかかりすぎますので、石油からでも植物と同じ成分が合成可能な場合は石油から作られることが多いです。
石油からだと大量生産ができ生産コストが下げられ、しかも安定的な供給が可能になるからですね。
あなたのイメージする”合成成分”のイメージはこの”石油化学物質”に近いのではないでしょうか?
1-3.では”天然由来成分”とは一体なんなのか。
ここまでは大丈夫でしょうか?
“天然成分”=化学的方法を使っていない・〇〇エキス
“合成成分”=化学的方法を使っている・石油
ざっくりこんなイメージです。
では”天然由来成分”ですが、これは何なのでしょうか。こちらも改めて見てみましょう。
天然由来成分とは
天然成分の中から取り出した特定の有用物質や天然成分を化学的に安定させた物質のこと。
– コスメコンシェル – より-
1. 天然成分の中から取り出した特定の有用物質
2. 不安定な天然成分を安定化させるために化学構造の一部を変えた物質
少しわかりにくいですね。つまりどういうことかと言うと、”天然由来成分”には2パターンあって、
1パターン目は、
“天然成分”のままでは有用成分のほかにもいろいろ不純物が混ざっているので、より純度をあげるために『精製』という様々な化学的工程を踏んだ物質、ということ。
つまり『”天然成分”から”化学的方法”によって取り出した、ある特定の有用物質』のことを言います。
この“化学的方法”というのは、自然ではありえない高温や高圧をかけたり、遠心分離機にかけたり、化学溶剤を使ったりといったことを指します。
ここで考えていただきたいのが、「これって果たして”天然”ですか?」ということです。
100歩譲って、ろ過したり蒸発させたりしただけのものだったらまだ”天然”と言えるかもしれませんが、天然の有用成分を取り出すために、化学溶剤を使ったりと化学的工程を踏んでいては、
「あなたのイメージする”天然”ってそれで合ってますか?」と聞きたくなります。すごく微妙なところです。
2パターン目は、「不安定な天然成分を安定化させるために化学構造の一部を変えた物質」とあります。
こちらの方なんか、化学構造を変えてしまっています。もちろん化学的方法で。(確認しますが、これは『天然由来成分』説明文です。)
先程、“合成成分”とは『天然成分をもとに”化学的な方法で”合成した成分』と説明しました。
これと言ってることがほぼ同じですよね。
どちらにしても“化学的工程が踏まれている”ということになります。
つまり誤解を恐れずに言えば、
“天然由来成分”とは、植物などの天然物を「原料」としているだけであって、出来上がったものは『化学的処理を加えた合成成分である』ということです。
“合成成分”=石油、というイメージだったかもしれませんが、
『原料が石油ではなく、”植物”であっても”合成成分”である』ということになり、
さらに、『なぜか植物を使ったときだけ”天然由来成分”と呼び名が変わっているだけ』ということです。
“天然由来成分”が、あなたのイメージしていた”天然”とは程遠いのはおわかりいただけましたでしょうか?
『天然由来成分配合』と謳っている商品のほとんどが、この『原料が植物なだけで、化学処理は加えられている』パターンです。
(さらに言えば『配合』もかなり怪しい言葉です。1滴でも入れれば”配合”はされていますからね。。)
“天然由来成分”ってそれほどあいまいな言葉なんですよね。
実際、シャンプーの洗浄成分でよく使われる”ラウレス硫酸ナトリウム”という成分は、ヤシ油からでも石油からでも作ることができます。
このうち、ヤシ油から作られた方だけを天然由来成分と言って、石油の方は天然由来成分とは言わないってなんだかおかしな話だと思いませんか?
1-4.石油も天然?
すこし話が逸れますが、こういったお話をすると、
『突き詰めれば”石油”だって天然物!そうするとこの世のすべての物質は”天然由来”ということになるから、”天然由来”という言葉に騙されないで。』
といった内容で”天然由来”に疑問を投げかけている話を聞くことがあります。
気持ちはわかるし、極論言えばそういうことになるんですが、それはなんだか的を得ていない気がするんですよね。
「石油も天然だから、石油から作られたものも”天然成分”でしょ。」
というよりは、先のラウレス硫酸ナトリウムの話で言えば、
「ヤシ油から作られようが石油から作られようが、どっちも同じ”合成成分”でしょ。」
という方が的確な気がします。
まぁどちらも『”天然由来成分”という言葉はかなりあいまいだ。』という内容なので、言いたいことは同じなのですが。
2.”天然由来成分”の真実その2『天然=良い・合成=悪い、という考えは間違い』
“天然由来成分”と謳っているものは”天然”とは程遠いということがおわかりいただけましたか?
ここからはもっと根本的なお話をしたいと思います。
「天然成分=お肌に良い」
「合成成分=お肌に悪い」
というイメージがあるかもしれませんが、その”イメージ”こそが大きな落とし穴だ、というお話です。
2-1.”天然成分”こそ危険だらけ!
「天然だと、お肌や体にも良くて安心安全」なんて思っていませんか?
実は”天然”でも人間には毒となるものは数多く存在します。
きのこ類は毒を含んでいる種が多いですし、ジャガイモの新芽部分に”ソラニン”という毒物が含まれていることなんかは広く知られていることだと思います。
他にも、山菜のワラビにもプタキロシドという発ガン性の毒物が含まれており、きちんとアク抜きをしないと危険ですし、うるしや、銀杏の実なんかは触れただけで肌がカブれることがあります。
このようにはっきりと毒を持っているものはわかりやすいですが、苦味や辛味、えぐ味なども広義の意味では”天然の毒素”と言えます。
植物は動くことができませんので、外敵から身を守るために何かしらの毒素を持っていることが多いのですね。
そのへんに生えている草をすりおろして肌に塗ってみてください。高確率でカブれると思います。
このように、本当の意味で”天然”というのは危険が多いのです。
“天然”か”合成”かで言えば、絶対”天然”の方が化学物質の種類は多いし、その分人によってはアレルゲンとなる可能性や刺激になる可能性が高いと思います。
そして実は、この”天然成分”から化学的方法を使って危険を取り除いたものが”合成成分”ということなんです。
ここで一つ例を出してみましょう。
2-2.”薬”のほとんどは”石油化学合成物質”
ヤナギの樹の皮を煎じて飲むと頭痛が治るのご存知ですか?
そのことは大昔から、それこそ紀元前の古代ギリシャ時代から知られており、実際に紀元前のギリシャの医師ヒポクラテスは、ヤナギの樹皮を鎮痛・解熱に使っていたと伝えられています。
時代は流れ、科学技術が発展し、なぜヤナギの樹皮には頭痛を治す作用があるのかを調べた人がいました。
そしてヤナギの樹皮に含まれる“サリチル酸”という化学物質が頭痛に効くのだ、ということを突き止めました。
しかしこのサリチル酸、頭痛は治りますが副作用として胃が非常に荒れることもわかりました。
これをなんとかしようと研究がなされ、1897年、胃が荒れにくいけれども頭痛にはしっかり効く、”アセチルサリチル酸(アスピリン)”を合成するのに成功しました。
これが世界で初めて人工合成された医薬品です。
“アスピリン”と書くとピンとこないかもしれませんが、“バファリン”と書くとわかりますでしょうか?
バファリンの主成分はこの”アスピリン”です。(優しさ、ではありません笑)
そしてこのアスピリン、現代ではもちろんヤナギの樹の皮から作られることはありません。
では何から作られるのでしょうか?
答えは『石油』です。
その全てが石油から作られるわけではありませんが、一部の成分は元をたどると石油に行き着きます。
そしてその他のかなりの種類の医薬品原料も、元の元をたどると石油にたどり着く場合が多いです。
このように、”天然成分”から危険を取り除き、私達人間が安心して使えるようにしたものが”合成成分”ということなんですね。
ちなみに、現代の製造メーカーの宣伝文句に当てはめるとこうなります。
ヤナギの樹の皮を煎じたもの = 天然成分
ヤナギの樹の皮から抽出されたサリチル酸 = 天然由来成分(抽出方法によっては天然成分)
ヤナギの樹の皮から抽出されたサリチル酸から化学合成してつくられたアスピリン = 天然由来成分
石油からつくられたアスピリン = 合成成分
できるものは同じアスピリンなのに、ヤナギから作られると”天然由来成分”、石油から作られると”合成成分”と呼んでいるようなものなのです。
“天然由来成分”という言葉がいかにあいまいで、誤解を招く表現なのかおわかりいただけましたか?
2-3.”化学合成成分”という『言葉』に対して過度に拒否しすぎ。
多くの人は”石油化学”とか”合成成分”という言葉に過度に悪いイメージを抱き過ぎだと感じます。
先の例のように、薬なんて漢方のようなものを除けば全て合成化学物質ですし、化粧品やシャンプーなども代表的な化学製品です。
使用される成分はすべて、法律等によって厳しい安全性の確認がとれたものです。
成分の詳細がはっきりしていないものが多い天然成分に比べて、合成成分はそれがはっきりしていますし、肌に良くない成分を取り除くといった意味では合成成分のほうが安全性と品質が安定していると言えます。
例えば、最近パラベンフリーを謳う商品が増えていますが、パラベンは極めて安全な防腐剤です。
未開封で3年保存できないと化粧品として販売できないので、パラベンは入っていないとしても必ず他の防腐剤が入っています。
その場合パラベンよりも濃度が濃くなることがほとんどで、結果パラベンを入れるよりも刺激が強くなるといった本末転倒なことになっている商品も多いです。
防腐剤そのものを入れないことも可能ですが、その場合は使用期限が1~3ヶ月程度と短くなるし、「防腐剤を入れないことのメリット」よりも「腐敗リスク」の方が大きいように思います。
他にも、ノンシリコンと謳ったシャンプーなども多いですが、シリコンも極めて安全な物質です。
その性質から考えても、毛穴に詰まるなんてことは絶対にありえませんし、シリコンを抜いただけだと髪がきしむのでその摩擦によって余計に髪が痛んでしまう、というこれまた本末転倒なシャンプーも多くあります。
「パラベンフリー」とか「ノンシリコン」とか言われると「え?悪いものなの?!」となりますよね。
ですが実際は、適量配合されていたほうがお肌にとっても体にとっても良いことが多いのが事実です。
このように、実際は悪者ではないのに、CMや宣伝・先入観などで、事実とは異なるイメージを植え付けられている事柄は意外に多くあります。
『天然由来成分』という言葉もその1つで、天然それ自体は特別良いものと言うわけではないのに、CMや宣伝などでさもそれが良いかのようなイメージを植え付けつけているのです。
そして困ったことに”天然”とつけるだけで売れてしまうんですよね。。。(良い表現をすればこれこそが”マーケティングだ”と言う人もいるでしょうが、「本当にユーザーのことを考えていてのことなのかな」と疑問に思うのが正直なところです。)
2-4.もちろん危険な”合成成分”もある
私が言いたいのは「合成成分は全て安心安全ですよ」ということではありません。
合成成分にももちろん危険なものはたくさんあります。
ケシの花からは鎮痛作用のあるモルヒネが抽出されますが、そこから麻薬である”ヘロイン”を合成できますし、
他にも、少し前に起きた「茶のしずく石けん」事件はご存知でしょうか?
小麦由来の「グルパール19s」という成分が、2000人以上もの人々にアレルギー誘発といった深刻な被害を引き起こしました。
そしてこの茶のしずく石けんは、「無農薬栽培茶葉」を美肌成分として使用していると謳っており、まさに”天然由来”をアピールした商品でもありました。
(現在も同じ商品名で販売されていますが、再開発されアレルゲンは取り除かれています。)
これこそ、“天然由来”の”合成成分”ですよね。
天然由来だからって安全でもなければ、合成成分だからって安全なわけでもないのです。
つまり何が言いたいのかと言うと、
安心安全という面で見れば『天然だろうが合成だろうが、植物由来だろうが石油由来だろうが、原料も製法も関係ない。要は出来上がった成分が何なのかが重要だ』
ということです。
2-5.シャンプーの成分で少なくとも避けてほしいもの
当店は美容室ですので、シャンプーを例に避けてほしい成分を少し挙げます。
シャンプーの主成分は、水を除くと一番多いのが界面活性剤となります。
先に例で出した、ヤシ油からでも石油からでも生産可能な“ラウレス硫酸ナトリウム”ですが、これも市販のシャンプーでよく使われる界面活性剤です。
商品名は挙げませんが、聞けば誰でも知っている、それこそ有名女優を起用してCMなどでも宣伝されているようなシャンプーにも使用されています。
このラウレス硫酸ナトリウムは、洗浄力が強すぎで肌への刺激になるので避けていただきたいです。
他にも、
・ラウリル硫酸ナトリウム
・オルフィン スルホン酸ナトリウム
・パレス-3硫酸ナトリウム
等は少なくとも避けるべきだと思います。
シャンプーにおいては、“天然由来成分”の他、ノンシリコン、パラベンフリー、無添加、オーガニック、ボタニカル、、、挙げれば他にもあるかもしれませんが、商品パッケージに書いてあるこのような言葉は全く無視していいです。
見る場所は1つだけ、裏に書いてある成分表のみです。
成分表はその量が多い順に記載しなければならないので、1番目はほとんどの場合”水”です。次に書いてあるのが洗浄成分、つまり界面活性剤ですね。
ここに先に書いた“ラウレス硫酸ナトリウム(Na)”などが書かれているものは避けるのが無難です。
さらに知りたい方はこちらの動画を是非ご覧ください。
当店では、低刺激で特許を取得している、お酢系のシャンプー(「バーデンスシャンプー」)を使用しています。
3.まとめ
『天然由来成分配合!』
今一度これを見てどう思いますか?最初とずいぶんイメージが違うのではないでしょうか?
“天然”の化粧品やシャンプーを探している人は、肌に優しいものを探していると思います。
ですがその“天然”や”天然由来”という言葉への間違った認識により、逆に肌に刺激になるものを使用してしまっていてはすごく残念ですよね。
そしてもっと残念なことに、そういった誤解を突いて”天然”というワードを使うメーカーや企業も多くいるのが事実です。
それを避けるためには、自分自身が商品を見極める力をつけるか、そういった情報を調べて勉強する以外にないと思います。
この記事があなたの商品を選ぶ力の一つになれば幸いです。
商品自体を見極め選ぶ力を身につけ、健康な肌・髪を保ちましょう。
では最後にもう一度うかがいます。
あなたは
「天然由来成分配合!」と書かれたシャンプーと、書かれていないシャンプーだったら、どちらを選びますか?
「それだけじゃ選びようがない」とか
「出た!また”天然商法”だよ」とか思って下されば、私もこの記事を書いた意義を感じ嬉しく思います。
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